身近な釣り場でよく見かけるものの、多くの釣り人から外道として嫌われることの多いボラ。しかし、そのパワフルな引きは一度味わうとヤミツキになるほどの魅力があり、ルアー釣りのターゲットとして非常に面白い魚です。この記事では、「ボラをルアーで釣ってみたいけど、どうすれば良いか分からない」というあなたのための、ボラの釣り方、特にルアーでの攻略法を徹底解説します。
なぜルアーに食ってくるのか、逆にどうして釣れないのか、そしてアタリを捉えるのが難しいと言われる理由は何なのか。また、おすすめのワームや、意外なパンやサビキでの釣り方、釣果を左右する時間帯は?といった疑問から、ジャンプすると釣れなくなるのはなぜ?というボラの不思議な習性まで、あらゆる角度からボラ釣りの世界を深掘りします。この記事を読めば、ボラへのイメージが変わり、きっと次の釣行で試したくなるはずです。
この記事で分かること
- ボラがルアーで釣れない具体的な理由と対策
- 状況や季節に合わせたおすすめルアーと効果的な使い方
- ボラ特有の習性を利用した戦略的なアプローチ方法
- これまで知らなかったボラ釣りのゲーム性の高さと魅力
基本的なボラの釣り方とルアーで狙う魅力
- なぜボラは釣り人に嫌われるのか
- ボラのアタリを捉えるのが難しい理由
- サビキ仕掛けでボラが掛かるのはなぜ?
- パンを餌にした釣り方の有効性
- ボラが釣れやすい時間帯はいつ?
なぜボラは釣り人に嫌われるのか

ボラが多くの釣り人から敬遠されるのには、いくつかの明確な理由が存在します。最も大きな原因は、その独特の臭いと体表のぬめりにあります。
ボラは雑食性で、河川の汚染された場所や生活排水が流れ込むような水域にも生息できる強い生命力を持っています。このような環境で、水底の泥ごと餌を食べる習性があるため、個体によっては身に泥臭さが付いてしまうのです。特に都市部の河川や港湾部で釣れたボラは、この傾向が強いと言われています。
また、釣り上げた際に体から分泌される多量の粘液(ぬめり)も厄介です。この粘液が手や衣服、そして高価なランディングネットなどに付着すると、独特の臭いがなかなか取れません。これが、シーバスなどを狙っている際に外道としてボラが釣れると、がっかりされてしまう大きな要因となっています。
ボラを釣った後の注意点
ボラの臭いやぬめりは、魚そのものが弱りやすい性質と相まって、丁寧な扱いを躊躇させるかもしれません。しかし、ゲームフィッシュとして楽しんだ後は、優しくリリースすることが大切です。陸に放置することは絶対に避けましょう。タックルに付いた臭いは、魚用の消臭剤などを使えば時間をかけて落とすことが可能です。
さらに、そのパワフルな引きも、時として嫌われる原因になります。シーバス用の繊細なタックルで大型のボラが掛かると、強烈なファイトで仕掛けを切られたり、やり取りに時間がかかりすぎて本命を釣るチャンス(時合い)を逃してしまったりすることもあります。これらの理由から、ボラは「厄介な外道」というイメージが定着してしまったのです。
しかし、視点を変えれば、この強烈な引きこそがボラ釣りの最大の魅力でもあります。水質の良い場所に生息する「寒ボラ」などは食味も非常に良いとされ、専門に狙う釣り人も少なくありません。(参考:TSURINEWS)
ボラのアタリを捉えるのが難しい理由

ボラ釣りを経験した人が口を揃えて言うのが「アタリが分かりにくく、掛けるのが難しい」ということです。その理由は、ボラの食性と口の構造に大きく関係しています。
ボラの主食は、イソメやゴカイなどの多毛類、藻類、そして水中のプランクトンなどです。これらの餌を、小さな口で吸い込むように、あるいはついばむようにして捕食します。魚を丸呑みにするフィッシュイーターのように、ルアーに「ガツン!」と激しくアタックしてくることは稀です。
そのため、ルアーやエサへのアタリは非常に繊細です。ウキ釣りでは、ウキがわずかに沈むか、モゾモゾと不自然な動きをする程度。ルアーフィッシングにおいても、手元に「コン」という明確な信号が伝わることは少なく、「ヌッ」や「モソッ」といった重みが乗るような違和感として現れることがほとんどです。
繊細なアタリを捉えるコツ
ボラの小さなアタリをフッキングに持ち込むには、タックル選びと集中力が重要です。穂先が柔らかいソリッドティップのロッドを使用すると、ついばむような小さなアタリも目で見て捉えやすくなります。また、ラインの僅かな動きや重みの変化に集中し、少しでも違和感があれば積極的にアワセを入れていく「聞きアワセ」が有効です。
この繊細なアタリを捉え、硬い口周りにしっかりとフッキングさせる一連のプロセスは、非常にゲーム性が高く、多くの釣り人を夢中にさせます。シーバスフィッシングとはまた違った、この奥深さこそがボラ釣りの醍醐味と言えるでしょう。
サビキ仕掛けでボラが掛かるのはなぜ?
堤防でのファミリーフィッシングの定番であるサビキ釣り。アジやイワシを狙っていると、とんでもないパワーで竿を絞り込む招かれざる客としてボラが登場することがよくあります。これは、ボラがサビキの擬餌針を食べているわけではありません。
理由は、サビキ釣で使うコマセ(撒き餌)にあります。コマセの主成分であるアミエビは、プランクトンの一種です。前述の通り、ボラはプランクトンを主食の一つとしているため、撒かれたコマセに狂ったように群がってきます。
コマセに興奮状態になったボラは、周りが見えなくなっていることが多いんです。その群れの中にサビキ仕掛けがあると、体にハリが引っ掛かってしまう「スレ掛かり」が多発します。
もちろん、コマセを吸い込む際に偶然、口にハリが掛かることもありますが、ほとんどの場合はスレ掛かりです。特に背中や尾ビレに掛かると、水の抵抗をまともに受けるため、本来の引き以上に強烈なファイトとなり、仕掛けを切られてしまう原因になります。
もしサビキ釣りでボラの群れが寄ってきてしまった場合は、一度コマセを撒くのをやめて群れが通り過ぎるのを待つか、タナ(水深)を大きく変えてみるのが得策です。
パンを餌にした釣り方の有効性

意外に思われるかもしれませんが、食用のパンはボラ釣りにおいて非常に有効なエサとなります。特に、河川や運河、港湾部など、人の生活圏に近い場所にいるボラには効果絶大です。
理由はボラの雑食性にあります。水面に浮いているものに興味を示す習性があり、特に白いパンは水中での視認性が高いため、ボラの注意を強く引きます。水面にパンを浮かべていると、どこからともなくボラが集まってきて水面で捕食するシーンは、多くの場所で見ることができます。
パンを使った具体的な釣り方
釣り方は非常にシンプルです。
釣り方 | 詳細 |
---|---|
パンを浮かせる釣り | 食パンの白い部分をちぎって、そのまま水面に浮かせるだけ。撒き餌としてパンを撒いてボラを寄せ、その中にハリを隠したパンを流し込みます。サイトフィッシング(魚を見ながら釣る)が楽しめます。 |
練りエサにする釣り | パンに少量の水を加えて練り込み、団子状にしてハリに付けます。ウキ釣りやミャク釣り(オモリだけで底を狙う)で、中層から底層にいるボラを狙う場合に有効です。 |
特別な道具は必要なく、のべ竿やコンパクトロッドといった簡単なタックルで手軽に楽しめるため、初心者やお子様にもおすすめの釣り方です。ルアーフィッシングの合間に、遊びとして試してみるのも一興でしょう。
ボラが釣れやすい時間帯はいつ?
ボラは基本的に一日を通して活動していますが、特に釣果が期待できるのは、多くの魚と同様に朝マズメと夕マズメの時間帯です。
マズメ時は、太陽の光量が変化することで魚の警戒心が薄れ、捕食活動が活発になるゴールデンタイム。ボラも例外ではなく、この時間帯はルアーへの反応が良くなる傾向があります。特に、シーバスなどのフィッシュイーターも同時に狙えるため、釣り人にとっては最も効率の良い時間と言えます。
夜釣りも有望な選択肢
ボラは夜行性というわけではありませんが、夜間も活発に活動します。特に常夜灯周りや橋の明暗部は、プランクトンや小魚が集まりやすいため、それを捕食するボラも集まってきます。日中よりも警戒心が薄れているため、ルアーをじっくり見せて食わせる釣りが展開しやすく、大型がヒットする可能性も高まります。
また、季節も釣果を左右する重要な要素です。特に春先の「バチ抜け」(ゴカイ類の産卵行動)の時期は、ボラが水面を意識してゴカイを盛んに捕食するため、夜間のルアーフィッシングで最もイージーに釣れるシーズンとなります。日中は群れで泳ぐ姿がよく見えますが、目が良いボラはルアーを見切りやすいため、マズメ時や夜間の方が釣りやすいと言えるでしょう。
ボラの釣り方!ルアーで釣れない時の対処法
- ボラ釣りにおすすめのルアーを紹介
- ワームでボラを釣るためのコツ
- ルアーにボラが食ってくる条件とは
- ルアーでボラが釣れない時の対策
- ジャンプすると釣れなくなるのはなぜ?
ボラ釣りにおすすめのルアーを紹介

ボラをルアーで狙う場合、その時のボラの捕食対象(ベイト)やいる場所(レンジ)に合わせたルアーセレクトが釣果を大きく左右します。ここでは、状況別におすすめのルアータイプを解説します。
フローティングミノー
サイズが5~9cm程度の小型フローティングミノーは、表層を意識しているボラに有効です。特に、流れのある河川などで、上流から流れてくるエサを演出する「ドリフト釣法」で威力を発揮します。リールはほとんど巻かず、ラインのたるみを取る程度で自然に流し込むのがコツです。

シンキングペンシル
ボラ攻略の代名詞とも言えるのが、シンキングペンシル、通称「シンペン」です。特に、春のバチ抜けシーズンには欠かせないルアーとなります。ゴカイが水中を漂うように、ゆっくりと引き波を立てながら泳ぐアクションが、ボラの捕食本能を強く刺激します。サイズは7~10cm程度の、細身のシルエット(にょろにょろ系)が実績高いです。

バイブレーション・スピンテールジグ
これらのルアーは、好奇心旺盛なボラのリアクションバイトを誘うのに有効です。特に、ボラは派手な色に好反応を示すことが多く、赤金やチャートといった目立つカラーがおすすめです。ボラの群れを見つけたら、その少し先へキャストし、群れの中を横切らせるようにリトリーブすると、思わず口を使ってしまうことがあります。

ルアーカラーの重要性
ボラ釣りでは、ルアーのカラーが釣果を分ける重要な要素となります。基本は赤や金といった派手なアピール系カラーが有効ですが、水の透明度が高い時や、スレている状況ではクリア系やナチュラル系のカラーが効くこともあります。状況に応じてカラーローテーションを試すことが、釣果への近道です。
ワームでボラを釣るためのコツ
プラグ(ハードルアー)だけでなく、アジングやメバリングで使われるようなソフトルアー、すなわちワームもボラ釣りに非常に有効な選択肢です。
ワームを使う最大のメリットは、そのナチュラルな動きとスローな誘いが可能である点です。硬いプラスチック製のルアーに比べて、より自然な波動でボラに違和感を与えにくく、ついばむようなバイトもフッキングに持ち込みやすくなります。
タックルは、アジングやメバリング用のライトなものが流用できます。繊細なアタリを取れるロッドと、ドラグ性能の良い小型スピニングリールがあれば、大型ボラとのスリリングなファイトが楽しめますよ。
ワームでの具体的な釣り方
主なリグ(仕掛け)は、1g前後のジグヘッドにストレート系やピンテール系のワームをセットする「ジグ単」が基本です。ワームのカラーは、ベイトに合わせてクリア系やゴカイ系のものが良いでしょう。
アクションは、基本的に「ただ巻き」です。表層を意識しているボラの少し上、または群れの目の前を、できるだけゆっくりと通すことを意識してください。時には流れに乗せて漂わせる「ドリフト」や、テンションを張って一点に留めておく「ステイ」といったテクニックも効果的です。ボラが口を使った瞬間の「モゾッ」というアタリを感じ、フッキングが決まった時の快感は格別です。
ルアーにボラが食ってくる条件とは

普段はルアーに見向きもしないことが多いボラですが、特定の条件が揃うと、まるでシーバスのように積極的にルアーに食ってくることがあります。その条件を見極めることが、ボラをルアーで釣るための最も重要な鍵となります。
最大のチャンスは、何度も触れている「バチ抜け」のシーズンです。これは春先の夜間にゴカイ類が一斉に水面で産卵行動を行う現象で、この時期のボラは完全にフィッシュイーター(この場合はワームイーター)と化します。遊泳力の弱いゴカイはボラにとって格好の餌であり、水面がボラの捕食でざわつく光景が見られます。この時、ゴカイに似せたシンキングペンシルをゆっくり引いてくれば、高い確率でヒットを得られるでしょう。
バチ抜け以外にも、以下のような状況が狙い目となります。
条件 | 解説 | 有効なルアー |
---|---|---|
アミ・マイクロベイトパターン | 春や秋に、アミエビやハク(ボラの稚魚)などの小さなベイトを偏食している状況。水面で口をパクパクさせているボラが見られたらチャンス。 | 小型のシンキングペンシル、ワーム、軽量ジグヘッド |
高活性な群れ | 理由は不明ですが、何かのスイッチが入って群れ全体が活発に泳ぎ回っている状況。好奇心が高まっており、リアクションバイトを誘いやすい。 | 小型バイブレーション、スピンテールジグ |
流れの変化や障害物周り | 流れがヨレる場所や排水口、橋脚の周りなど、餌が溜まりやすい一級ポイント。待ち伏せしている個体がいる可能性が高い。 | フローティングミノー、シンキングペンシル |
ボラの群れを見つけたら、ただルアーを投げるのではなく、彼らが何をしていて、何を捕食しているのかを観察することが、釣果への一番の近道となります。
ルアーでボラが釣れない時の対策

ボラはいるのに、ルアーを投げても全く反応がない。これはボラ釣りで誰もが経験する「釣れない」壁です。ボラは非常に目が良く、警戒心も高いため、少しでも不自然なものには口を使いません。そんな時は、いくつかのアプローチを見直してみましょう。
ルアーを見直す
まず試すべきは、ルアーのサイズダウンです。ボラの口は小さいため、大きすぎるルアーは警戒されたり、そもそも口に入らなかったりします。普段使っているシーバスルアーから、メバリングやアジングで使うような5cm以下のルアーに変えるだけで、反応が劇的に変わることがあります。
次に、カラーローテーションです。前述の通り、派手なカラーが基本ですが、それで反応がなければクリア系やゴースト系などのナチュラルなカラーへ変更します。その日の水の濁り具合や光量に合わせることが重要です。
アプローチを見直す
ルアーの動きが速すぎたり、派手すぎたりすると、ボラはすぐに警戒してしまいます。基本は「スロー」で「静か」なアプローチを心がけてください。リトリーブスピードを極限まで遅くする「デッドスローリトリーブ」や、流れに任せる「ドリフト」が基本戦術です。
群れの進行方向を読む
ボラの群れに直接ルアーを投げ込む「直撃」は、群れを散らしてしまう最悪手です。必ず、群れの進行方向の少し先へキャストし、ルアーが自然に群れの前を横切るようにコースを調整しましょう。
これらの対策を試しても反応がない場合は、ボラの食い気がないと判断し、場所を変えるか、時間を改めて出直す勇気も必要です。
ジャンプすると釣れなくなるのはなぜ?
釣り場でボラが盛んにジャンプしている光景を見たことがあるでしょう。一見、活性が高そうに見えますが、不思議なことに、ボラがジャンプし始めるとルアーへの反応が極端に悪くなる、つまり釣れなくなることがほとんどです。
このジャンプの正確な理由は、実はまだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの有力な説が存在します。(参考:TSURI HACK)
- 警戒・威嚇説
釣り人の存在やルアーの着水音などに驚き、仲間へ危険を知らせるため、あるいは威嚇のためにジャンプするという説です。この場合、ボラは当然ルアーを警戒しているため、釣れなくなります。 - 寄生虫除去説
体に付着した寄生虫「ウオジラミ」などを、水面に体を叩きつける衝撃で落とすためにジャンプするという説です。この行動は捕食とは関係がないため、ルアーには反応しません。 - 酸欠解消説
夏場の高水温時など、水中の溶存酸素量が少なくなった際に、酸素を取り込むためにジャンプするという説です。この場合も、魚のコンディションが悪く、捕食活動は低調になります。
どの説が正しいにせよ、ボラのジャンプは、ルアーフィッシングにとっては良い兆候ではないと覚えておくと良いでしょう。もし狙っているポイントでジャンプが始まったら、少し場所を移動するか、群れが落ち着くのを待つのが賢明な判断です。
ボラの釣り方とルアー攻略のポイント

この記事で解説してきた、ボラをルアーで釣るための要点を最後にまとめます。次の釣行で、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。
- ボラは独特の臭いから嫌われるがゲーム性は非常に高い
- 水質の良い場所で冬に釣れる寒ボラは食味も良い
- ボラのアタリは小さく繊細でフッキングが難しい
- ルアー釣りの最大のチャンスは春のバチ抜けシーズン
- ボラが釣れやすい時間帯は朝夕のマズメ時と夜間
- おすすめルアーはシンキングペンシルや小型ミノー
- ワームを使う場合はアジングタックルなどのライトな装備が面白い
- ルアーカラーは赤金など派手なアピール系が基本
- 釣り方はスローリトリーブやドリフトで静かに誘う
- ルアーを見切られるためサイズやカラーのローテーションが重要
- 釣れない時はルアーを小さくしアプローチをよりスローにする
- 群れに直接ルアーを投げ込むのは避ける
- ボラのジャンプは警戒しているサインで釣れにくくなる
- パンを餌にした簡単な釣り方も楽しめる
- 強烈な引きに備えドラグ調整はしっかり行う